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 銀座の王子ホールへ行ってきた(最近、週に1回くらい? 笑)。11月10日(月)のことである。
 毎年この時期に行なわれている、後藤悠仁さんのリサイタルに、今年初めて行ったのだ。
お名前が、最近お生まれになった某皇室のお子様と同じで、しばらく(身内で)話題になった、程度には親しい方である。日本フィルハーモニー交響楽団の首席奏者。たいへんに素晴らしい首席で、あの楽団の弦の響きの一端を担う巧者でもある。

 「ヴィオラで年に1回リサイタルを打つなんて、無謀なんですけど」と仰る。その通り。まずレパートリーの問題があるし、なんといっても最多忙な楽団(?)(<びんぼだから)ともいえるオケの仕事がばりばりにあるし、ほかにもアマチュアオーケストラのトレーナーとか行っている(レッスンも非常に上手、、、と断言するのはレッスン受けたことあるからです、はい。その時は伴奏で行ったんだけど)。
 だから、同じ曲を弾いたりもなさるが、それはそれで変化が楽しめるという醍醐味がある。

 しかし、王子ホールが完売の満席。……これは凄いことだ。常連、というファンの方がいらっしゃる。ふだん演奏会をあまり聴かない方もいるそうで、これはもう演奏もだけれど人柄もあるんだろう。

 その通りの音楽と音色(ねいろ)と、素敵な一夜。楽曲の完成度も高いし。中でもヴィオリストなら誰でも弾くのでけっこうあちこちで聴いたよな、というヒンデミットの無伴奏ヴィオラソナタは非常に素晴らしく、うわぁ、と思いながら聴いた。現役プレーヤーって本当に(当たり前だけど)上手いよなぁ。

 楽団員であることに軸足のある方のソロ演奏と、ソリストとしてだけ続けている方というのは、音の作り方が無意識にずいぶん違うと感じる。もちろん、ある程度は切り替えをするものではあるが、特に中低弦を担当する場合に、和声の作り方や、音階の3音7音の取り方に特徴があるような気がするのだ。楽団の中核を担う弾き手は、だから極めて音がハマって心地よい。特に和声感はデフォルトのものなんだろうなぁ、すごい。…その分、突出した特徴が無くなる可能性はあるけれども、そんなこともなかった。

 ほっこりと温かい空間。聴衆と、舞台の上の一体感。応援したいと思う人たち、それに感謝しつつ演奏している人。またそれを楽しみに聴き楽しんでいる人たち。
 逆に言えば怖い聴衆かもしれない、だからそれに問うということも素晴らしいのだった。

 恵まれた手指もあるのかもしれないが、技術がとても安定していて驚く。私が言うとエラソーかもしれないけれども、ぴったりと左手が動き、右手はいとも軽々と、難しい音を紐解いていく。聴き手は音楽だけを楽しんでいればいい。

 ピアニストも音色(おんしょく)は素晴らしく、たぶんテクニックもあるのだろうし、アンサンブル技術も抜群だ。人柄も良さそうだし…しかし私はパス。ブラームスのヴィオラソナタ第1番。とても好きな曲。これはピアノとヴィオラのデュオであり、どちらが主役でもない。ずいぶんフランス~っぽい演奏だったが、私はドイツっぽい方が好きだし、メリハリももっとあった方がすき。解釈の違いといってしまえばそれまでだけれども、ピアノが仕掛けたり、語ったりするべきところも浮いて来ないのだ。できないのでなくやってないように聞こえる、つまりそういう解釈なのだろうと思う。
 だから、全体に枯れた印象があって……そうじゃないんじゃないかな。と私は思った。ぺダリングが好きではないので、よけい耳に障ったのかもしれない。…と思ったのが唯一の難だったかな。

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