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 日本フィルの6月定期。指揮者は井上道義氏。
 楽曲が、安倍圭子さんをソリストに擁する、伊福部の「ラウダ・コンチェルタータ」であるとすれば、これは聴かないわけにはいかない。誰かの言葉ではないが、もうこれは「演奏していただけるだけで、ありがたいことです」です。
 
 日本フィルハーモニー交響楽団 第621回定期演奏会(at サントリーホール)
   指揮/井上道義 マリンバ独奏/安倍圭子 演奏/日本フィル
   曲目/伊福部昭:「ラウダ・コンチェルタータ」、ストラヴィンスキー:交響曲 C、「火の鳥(1919版)」

 定期の持っているチケットを友人に譲ってしまったので(ぜひ聴いてもらいたかったわけです)珍しく、ご招待券を使わせていただき、LB5列の9番、という超お気に入り席で堪能♪ 感想はまた、のちほど書きますが、本当に、(金曜の夜は定演後、必ず集まるメンバーと必ず行く飲み屋で飯を食うわけですが)酒が旨かった♪
 メンバーには「明日も来たまえ」とゆわれておりますが、明日は朝7時から新国立劇場に並ぼうかどうしようか迷うところです。師匠とは連絡取れないしなぁ(;_;)。えーん。

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曲はマイナーといえる曲かもしれません。

 1曲め。あのゴジラの伊福部昭の名曲。このマリンバ協奏曲はもう四半世紀、彼女が持ち曲として世界中で演奏し続けてきたわけで、伊福部先生(母校の学長だったので敢えてそう呼ばせていただく)と安倍さんの名とこの曲は一体化して伝えられて残るのだろうなと思います。…新作や現代音楽というものは、演奏され、演奏され続けることが必要なんですよね。かの名曲、バッハの「マタイ受難曲」が、メンデルスゾーンが再演するまで10年間埋もれ続けていたように。

 私は15年前に、それの「第100回目の」演奏会を目の前で聞きました。東京文化会館の大ホール。マリンバの前を跳ねながらリズミカルに動く肢体と、それそのものが大地のエネルギーを伝え演奏する姿にまるで巫女の奉納舞だと思ったのは私だけではなかったようです。伊福部の音楽の凄さは、そのメロディとリズム感、なんというかうまくいえませんが。日本人の血を熱く沸かせるような力を持つ音楽というのは彼の前にもあとにも存在しないようにも思っています。大地の魂(エネルギー)を感じるのです。特にこの曲はそれが顕著な気がして、ただしこの曲が伊福部の代表作か、というと曲の作りからはそうはいい難いのではありますが。
ヤマトのファンの方々でしたら、絶対に、ずんとくるものがある。

 演奏の間中、わけのわからない涙がぽろぽろと流れて仕方ありませんでしたね。音楽というのは抽象的だけにいろいろなものを包括する。老いた痛々しさと同時にそこから発せられる明るい凄さは、若い頃に拝見したときのような切羽詰った気力はなく、ただ曲と一体化したある種の悟りのようなものを感じました。もちろん技術的な衰えはピアノや指揮や弦楽器と異なり、これだけの運動量と反射神経を保つだけでもタダビトではないと思わせられる、納得の演奏だったと思います。
 その激しいアクションと両手に2本ずつ持ってマリンバを叩く安倍さん・・・どう考えても60代後半のはずだがと思っていたら、みっちーの言で70歳は過ぎておられることが判明しました。です。そのパワーと気力、音楽性。巫女ではなく今日は卑弥呼でしたね。もちろん若い頃のような躍動感はありませんし技術の衰えは仕方ありませんが
それにも増してよくなったところもあり、また別の世界が広がっているようで。もしかするとそろそろ彼女にとって最後の「ラウダ・コンチェルタータ」になるかもしれない。日本フィルの人たちも、一体化し、素晴らしい音楽を奏で、これは日本フィルの良さを指揮者がよく引き出した演奏だったと思われました。

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 ストラヴィンスキーの2曲。
 交響曲inCは、なんでまたこんなマイナーな曲を(笑)。曲目解説によると伊福部とストラヴィンスキーを関連付けさせてそれに関係の深い曲をと読み解きたかったのだろうが、プログラム構成としては大変に面白く、個人的には近頃の日本フィルの中でも好みのプログラムです。
 またたまたま偶然だが、後半2曲は、演奏したことあります(笑)。譜面がよくわかって面白かった(思い出もある。あぁぁあそこで苦労したよなーとか、ホルン・ファゴットに「ちゃんと吹けよ」とか思ったしなぁとか、、、余談ですがこの日のホルンはF川氏で、たいへんに素晴らしかった)。演奏している分には旋律やテーマが断片的に現れそれが構成されていく、というシベリウス的な(<だからうちのオケでやったんだな)構成なので、弦楽器の内声など弾いているとたいへんにわかりにくい。でも本当はシンプルで洒落た曲なのである。演奏者はカタルシスを得にくいのだが、もっと取り上げられてもよいなぁとこの日の(なかなか素敵だった)演奏を聴いて思った。

 火の鳥。なかなか満足して終わりました。

 ちなみに座席はいつもと異なり、2F・LB 5列-9。たいへんに良いお席でございました(音も視界も)(_ _)
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