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2月2日、土曜日。
…というともう少し前になってしまうが、紀尾井ホール(小)へ、プロジェクトQの仕上げコンサートを聴きに行ってきた。
これは毎年、テレビマンユニオンが行なっている若い演奏家たち支援の室内楽プロジェクトで、来日する世界の一流弦楽器奏者たちによるクリニックと、トライアルコンサートの繰り返しによる1年間の弦楽四重奏のトレーニングと場の提供である。

このあとどうするのか。それでうまくいってしまったらどうするのか。
そんな疑問は残るだろうけれど、場を提供し機会を与えるという意味は大きい。聴き手側にとっても、室内楽が育ちにくい土壌である日本において、こういう機会が設けられ、人々の目や耳に触れるだけでも違うだろうと思う。

まぁ毎年必ず何らかの形で顔出してはいるのだが、今年は夏時期のワークショップが見られなくてけっこう残念だった。but本番の最後の3組がベートーヴェンの4、5、6に挑戦というので聴きに行く。

一組目。第4番、c-moll。桐朋4人組・男ばかりのチーム。
1stに注目の新人・崎谷直人くんが座る。
 演奏した曲と譜面を読み勉強しただけの曲に理解度の差があってはいけないと、聴く方がシゴトの私は思うのだが、いかんせん実践派の自分には、その格差は明らかにある。この曲はひどくまじめに研究し、カルテットでも弾いてもい、好きな曲でもあるので細かい音までが耳に飛び込む。曲の解釈についても様々な意見を持ってしまう。
 彼らのコンセプトは明らかで、それを弾ききる力量の持ち主たちだった。そしてそれぞれが個性的で、さらにひとりずつがソロが弾ける腕前の持ち主だ。現状、そうでなければ室内楽奏者として活動をするのは難しいのだ。
 組んで1年だそうだ。学内の試験で首席を獲ったというチームで、授業で組んだのがきっかけなのだろう(おそらく)。だが、男4人というのも良いし、実力も華もある。それぞれの役割もきっちりしていて、個性もある。…続けてほしいなと思うのは欲目だろうか。

2組目。第5番。東京音大組・チェロだけ男。
 チェリストが体調を崩し代役だったのがさすがに音的にも残念だったが(もちろん良く弾いていたが、一体感という意味では少々辛かった)、東京音大の弦のレベルもこのあたりまで来たのか、という感慨を持った。ピアチェーレの弟子たちだということでさもありなん。リサイタルも経験済みというが、演奏会経験豊富なメンバーのいる前後の組に比べてしまうと発表会的なのは否めない。が、これまで弦といえばTかGか、だった処へもってきての、母校のレベルアップは、なかなか期待を持たせてくれ嬉しかった。

3組目。第6番。芸大3年生同級生女4人組。
 というか、この「ステラ」はもう業界では知られたチームだ。芸高2年から組んで、演奏活動も視野にいれながら様々な機会に現れ、マスタークラスを受けたり、また軽井沢の音楽祭などでも演奏する。室内楽でもやっていこうという気があると思われ、ずっと応援していたりもする。1stとヴィオラはコンクールの入賞経験も持つ。4人ともが達者な技術を持つが、卒業した瞬間が勝負だろうと思っている。
 さすがに安定した団体で、グループとしての音色が少し出てきた。4人の合奏ではなく、カルテットとしてのまとまりが感じられたのは初めてのことで、この団体がベートーヴェンには注力してきているのも無関係ではないだろう。また、音色の説得力は他に比べ、ステージ経験値の差なのかもしれない、よく通る。彼女たちが目指している強さのようなものはもう一歩というところだが、志向する方向性も見え始めて、楽しみなグループである。

と、学生の演奏としては、なかなか“コンサート”として満足した演奏会だったです。
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